2014年4月14日月曜日

漢詩 江南春





Jiang nan chun
  
du mu
杜 牧 
qian li ying ti lu ying hong
        千里鶯啼いて 緑 紅に映ず
shui cun shan guo jiu qi feng
        水村山郭酒旗の風 
nan chao si bai ba shi si
        南朝四百八十寺
duo shao lou tai yan yu zhong         多少の楼台烟雨の中

杜牧(803852):晩唐の詩人。字は牧之。京兆萬年(現・陝西省西安)の人。進士になった後、中書舍人となる。杜甫を「老杜」と呼び,杜牧を「小杜」ともいう。

千里鶯啼綠映紅:江南(長江の南)地方一帯で、鶯が啼き、若葉の緑が紅い花に照り映えている。 
水村山郭酒旗風:水村や山城では酒屋の旗印に吹く風がのどかである。 ・水村:水辺の村。水郷。 ・山郭:山沿いの聚落の外周の建物。 ・酒旗風:酒屋の看板になっている旗・酒簾に吹く風。当時の人文風景である。詩の題材に酒を取り入ることはよく見られる。杜牧の「清明」も有名な絶句である。
清明時節雨紛紛 路上行人欲断魂 借間酒家何處有  牧童遥指杏花村 
南朝四百八十寺:南朝時代に、(江南には)四百八十寺といわれるほど多くの寺が建てられたが。 ・南朝(420589):江南の地に興った六朝(呉、東晉、宋、斉、梁、陳)である 多少樓臺烟雨中:字面の意味は、多くの建物が霧雨中に霞がかっているが、どれほどの寺院楼閣が歴史上の戦火と風雨の中で失われたか、という深い歴史への思いも表わしていると思っている。 多少:多くの。また、どれほどの。

この詩の表現法に近いのは、同時代の詩人孟浩然の「春暁」である。
春眠不覺曉處處聞啼鳥 夜來風雨聲 花落知多少
同じく、「見景抒情」、「借景抒懐」であり、美しい春景中に歴史の変遷、諸行無常の感懐を淡々と表わしている。



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